リスティング広告のインハウス運用とは、リスティング広告のキーワード選定、入札管理、広告文の作成や修正、レポート作成などを、代理店などの外部企業に依頼せず自社メンバーが一貫して担当する運用形態を意味します。社内でPDCAを回すことで、迅速な施策改善とノウハウ蓄積が期待できるため、インハウス化 する企業が増えています。本記事では、リスティング広告のインハウス化を検討している担当者に向けて、メリット・デメリット、運用のコツを解説します。筆者:谷吉一樹2015年 (株)LIFULLに入社し、LIFULL HOME'Sのデジタル マーケティングを担当しインハウス化PJを担当。その後、最年少グループ長として、メールやLINE、広告などの 獲得チャネルを活用した新規事業の戦術策定に携わり、200%成長に貢献。2020年 (株)博報堂に転職。大手生保でのMAツール・DMPを活用した ナーチャリング戦略を立案・実行し社長賞を受賞。2022年1月にマーケター育成事業を共同創業。その経験をもとに2024年5月に独立。マイソース社を設立し、ベンチャーから大手企業まで幅広くマーケティング支援を行う。リスティング広告とは?リスティング広告は、検索エンジンの検索結果にユーザーのキーワード入力と連動して広告を表示できるため、ユーザーの検索意図に合わせて認知を高めることができます。たとえば「◯◯を購入したい」「◯◯を比較したい」という明確なニーズを持つユーザーに対し、広告を出せるため、他のデジタル広告に比べてコンバージョン率が高くなりやすいのが利点です。特徴は、掲載位置のコントロールや入札単価の調整によって、費用対効果を短いサイクルで評価しつつ最適化を進められる点です。一方で、競合が激しいキーワードではクリック単価が上昇しやすく、キーワード設定や入札戦略などがよりテクニカルになるため、ある程度の専門知識がないと成果を出しにくい面もあります。結果として、ユーザーの能動的な検索行動に合わせた高精度な広告配信が行える一方、運用面では細かい調整や日々の最適化が欠かせないというのがリスティング広告ならではの特徴です。リスティング広告をインハウス化するメリット・デメリットメリット💰 コストを削減できる外注すると代理店への手数料やコンサルフィーが恒常的に発生しますが、インハウス化するとその費用を実際の広告出稿予算として回せるため、結果としてコンバージョン率や売上を最大化しやすくなります。長期的に見たときに、広告コストが効率化できるでしょう。📚 社内ノウハウを蓄積できるインハウス化することで、施策の成功例・失敗例を自社の資産として残すことができます。ABテストの結果やユーザーの反応などをチーム内で共有すれば、他の営業やプロダクトの開発の部署にも横展開できます。⚡️ 素早くPDCAサイクルを回すことができる担当者がすぐに入札額や広告文を変更できるため、競合が新しいプロモーションを仕掛けてきたときや市場のトレンドが変わったときなど、刻一刻と変化する市場の動向や競合の出方を参考にしてPDCAを回すことができます。外注すると、コミュニケーションコストが発生するため、タイムラグが生じる可能性があります。デメリット🎓 運用スキルの習得が必要リスティング広告は、単にキーワードを設定すれば成果が出るものではありません。競合状況や検索意図の分析、入札戦略の最適化、クリエイティブのABテストなど、多岐にわたる専門的な知識が求められます。新人担当者がゼロから学ぶには時間がかかり、勉強時間の確保や実践経験の積み方も考慮しないと成果が出るまでのリードタイムが長引くこともあります。外注すると、経験豊富な担当者が実行するため、成果を出すまでの時間を短縮できる可能性が高くなります。⏳ 運用担当のリソース確保中小企業やスタートアップでは、マーケティングの担当者が他業務と兼務するケースが多く見られます。リスティング広告の最適化には日々の調整が必要となり、ツールの機能やアルゴリズムのアップデートが頻繁に行われるため、運用に十分な時間をかけられないと、中途半端な運用で終わってしまう恐れがあります。リスティング広告運用をインハウス化するためのステップリスティング広告の運用は、大きく分けて「戦略立案と目標設定」「アカウント・キャンペーン設計」「キーワードやターゲットの選定」「入札と予算管理」「運用・最適化」「レポート作成とデータ分析という流れで進めます。それぞれの業務と注意すべきポイントをご紹介します。1. 戦略立案と目標設定まず、リスティング広告でどのような成果、例えばリード獲得を重視するならCPA(広告によって誘導されたユーザーが特定のアクションにいたった回数当たりの費用)売上を重視するならROAS(広告の費用対効果や広告費用回収率を測定する指標)など、どのようなターゲット層を狙うか、月ごとの広告予算、達成すべき目標数値をどう配分するかを明確にしましょう。市場状況や競合の出方、自社の商品・サービスの強みを踏まえて、具体的なターゲット像と成果指標を言語化しておくと、担当者の判断基準がそろい、運用を進めやすくなります。2. アカウント・キャンペーン設計アカウント構造は「アカウント→キャンペーン→広告グループ」でわかれています。これらは、事業や商品カテゴリに合わせて、適度な粒度で設計するのがポイントです。キャンペーンと広告グループは混在させすぎると分析がしづらくなり、逆に細かく分けすぎると管理コストが増大するため、カテゴリや検索意図を軸にグルーピングするのがおすすめです。こうした設計を意識すれば、成果の計測や改善が格段に進めやすくなります。アカウントは、リスティング広告全体を管理する最上位の単位で、支払い情報や利用者の権限設定などをまとめて扱う部分にあたります。基本的には一企業に一つですが、ドメインが異なる場合は別途設けることもあります。キャンペーンは、アカウントの下にある大きな“箱”のようなもので、予算や配信地域、配信ネットワークなどの基本設定を行う単位です。例えば、商品カテゴリやマーケティング目標、セールの有無などでキャンペーンを分けます。広告グループは、キャンペーンをさらに細分化する単位です。同じテーマや検索意図を持つキーワードをまとめることで、キーワードの選定やマッチタイプ、入札単価の調整を行いやすくなります。3. キーワードやターゲットの選定Google キーワードプランナーなどのツールを使い、想定しているキーワードの検索ボリュームや競合度、推定CPC(インターネット広告における1クリックあたりの広告掲載料金)などを確認し、最初の入札単価や月間予算の見通しを立てましょう。キーワードプランナーでは、関連キーワードの候補も提案されるため、自社商品やサービスに合う語句を新たに発掘しやすく、季節性のあるキーワードをチェックすることで需要が高まる時期に予算を調整できます。逆に、無関係の検索クエリで広告が表示されると無駄クリックの発生に繋がるため、対象外キーワード(除外キーワード)を適切に設定し、不要な表示を防ぎましょう。たとえば、明らかに購買意欲が低い語句や、競合他社のブランド名など意図しない検索語を洗い出し、リストに追加します。定期的に検索クエリレポートをチェックして、除外漏れがないかを更新し続けることで、広告費の無駄遣いを最小化することにつながります。▼例:キーワードプランナーで表示されるデータ4. 入札と予算管理自動入札を利用するか手動で行うかを選び、キャンペーンごとに適切な予算を設定します。自動入札はGoogleのアルゴリズムによって入札単価を調整し、目標とするCPAやROASを達成するよう最適化する機能です。特に十分なコンバージョンデータが溜まっている場合、手動では難しい細かな入札の変化をリアルタイムで実施してくれます。一方で、データ量が不十分だと安定した成果が得にくい面もあるため、広告アカウントの履歴がある程度蓄積されてから活用するのがおすすめです。運用開始後は、計画通りに費用が消化されているか、目標CPAを達成しているかなどを細かくチェックします。成果が低迷している場合はすぐに改善する、一方成果が出ている場合は予算を追加するなど効果を最大化するための対応をしましょう。5. レポートの作成・分析週次や月次で広告費、クリック数、CTR、CPA、ROASといった指標を可視化し、過去データとの比較や異常値の発見を行うことで、次にどのような施策を実施するべきか・どのような改善すべきかのヒントが見えてきます。レポートは「結果」だけでなく、変動の要因や施策単位での振り返りを入れると、チーム全体の学びにつながるでしょう。リスティング広告運用のインハウス化の成果を最大化するコツ🔁 リマーケティングリストの設定リマーケティングは、一度サイトを訪れたものの離脱したユーザーに再アプローチする手法です。Google広告のリマーケティングリストでは、ページ閲覧や滞在時間などの条件を柔軟に設定可能です。たとえば、カートに商品を入れたまま購入しなかったユーザー向けの広告を配信することで、検討段階にいる顧客を呼び戻す可能性が高まります。🔍 広告表示オプションの活用広告表示オプションを活用すると、広告文だけでは伝えきれない情報を追加し、ユーザーの興味・関心を引きつけることができます。たとえば、サイトリンクやコールアウト、電話番号表示などを追加することができます。これにより、ユーザーは広告をクリックする前に詳しい情報を把握することができ、目に留まりやすくなります。💡 レスポンシブ検索広告の活用レスポンシブ検索広告は、複数の見出しや説明文を組み合わせ、Googleが最適なパターンを自動的に生成する仕組みです。様々なコピーを試しながら、ユーザーの検索意図やデバイス、履歴に応じて柔軟に表示を変えられます。特にキーワードごとに訴求メッセージを変えられるため、汎用的な広告文では届かないユーザー層へもアプローチできることが特徴です。🤖 DSAの使用DSA(Dynamic Search Ads)は、サイト内のコンテンツをGoogleが自動的にクロールし、検索意図とマッチする見出しを自動生成して配信する手法です。特に商品数が多く、一つひとつを手動で設定するのが難しいECサイトなどで有効的です。ユーザーの検索語句に合わせて動的に広告タイトルを生成するため、広範囲のキーワードをカバーできるのがメリットです。ただし、関係のないページが配信対象にならないよう、除外設定やサイト構造の見直しが必要になります。リスティング広告運用を効率的にインハウス化するにはリスティング広告のインハウス化には、コスト削減や社内ノウハウの蓄積、スピーディーにPDCAを回せるといった多くのメリットがあります。一方で、専門知識の習得や運用担当のリソース確保といったデメリットもあり、なかには「専門知識が足らず効果を最大化できない」「リソースが足りず運用が放置されてしまう」「効果の良し悪しが判断できない」という失敗例もあります。そこで、選択肢の一つとして、段階的にインハウス化していくという方法もあります。この方法では、最終的にインハウス化をすることを前提に、社内担当者がリスティング広告のプロから学びながら施策を実行していく方法です。そうすることで、インハウス化のデメリットである「専門知識の不足」「リソース不足」といった点を補うことができます。外注先としてコンサルや代理店などが挙げられますが、上記で記載したような部分的インハウスや段階的インハウスに対応していない場合も多いです。一般的な代理店の場合、運用代行を行う代わりに社内にノウハウが溜まりにくいという課題があり、一般的なコンサルの場合、戦略面のレポートは充実するものの実際の施策実装を社内だけでやりきるのは大変です。その中でもマイソースは、完全な外注でもなく単なるコンサルでもなく、段階的インハウスのように、企業の立ち上げ期を支えながらインハウス化を目指すというスタンスをとっています。具体的には、下記のように支援をしています。戦術策定から実行支援まで:KPI設定・施策立案から、広告運用やコンテンツ制作などの施策実行もサポート密に連携し迅速な実行:定例ミーティングやチャットコミュニケーションなどで密に連携し、スピーディーな意思決定や施策実行インハウス化の推進:最初に「どこを社内で担い、どこを外部リソースに任せるのか」を明確にし、担当者が自走できる体制の構築ダッシュボードの構築:数字を可視化し定常的にモニタリングしながら、PDCAを回す仕組みづくりご興味がある方・話を聞いてみたい方は下記からお問い合わせください。https://www.mysource.jp/ まとめリスティング広告のインハウス化は、コスト削減や社内ノウハウの蓄積、スピーディーにPDCAを回せるといったメリットがある一方、「インハウス化すれば必ずコスト削減になる」というわけではありません。担当者の離職リスクや評価体制をどう構築するかも含めて検討する必要があり、長期的に見たときに自社運用が本当に妥当かどうかしっかり検証する必要があります。私たちマイソースでは、運用型広告のインハウス化を支援するだけでなく、「そもそもインハウス化すべきか?」というフェーズでのご相談にも対応しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。